組織内コミュニケーションには、フォーマルコミュニケーションとインフォーマルコミュニケーションとがある。会議などのフォーマルコミュニケーションとは異なり、喫煙室や食事の席での会話といったインフォーマルコミュニケーションは発生が偶発的であり、目的や手段がはっきりしていない。しかし、近年インフォーマルコミュニケーションの重要性が指摘されているという。なぜなら、情報技術の導入によってオフィスが分散型となりインフォーマルなコミュニケーションが希薄になる一方で、ナレッジマネジメントの考え方が社会に浸透し、暗黙知共有の重要性が注目を集めるようになったからだ。私は、ふと前職での経験を思い出した。
私が乗務員になってまもない頃、非常に厳しいチーフの下についたことがあった。フライトを終えると滞在先にて皆で食事に行くことが多いのだが、その頃はとにかく憂鬱でならなかった。何かにつけ食事の席で怒られるからだ。例えば、オーダーを取るときの手際が悪い、先輩のグラスがあいていることに気がつかない、はたまた、帰りのタクシーで座る位置が悪い、など挙げるときりがない。しかし、何ヶ月か経つと指摘されなくとも自然と周りに目が届くようになり、上司たちの仲間入りができたような気分で、食事をしながら様々な情報を得られることを楽しむようになっていた。そして、その経験が社会人としても乗務員としても自分の財産となっていることに私はその後気づくこととなる。「個人主義が広がる社会で、今時こんな教え方古いってわかっているけど、大事なことだと思うから。」と語ったその上司とはそれからもずっと親しくさせていただいた。
現在、キートゥサクセスに勤めているが、これがまた非常にインフォーマルコミュニケーションの活発な職場である。社員の誕生日や何かの記念日といっては皆で食事をすることが多い。そのせいか、社内の雰囲気がよく、仕事中ふと顔を上げ他のコンサルタントたちに疑問を投げかけ討論を行うことで、何かのヒントを得ることも多い。暗黙知の領域が大きいコンサルティングの仕事において、インフォーマルコミュニケーションは有難いと感じる今日この頃である。 |