先日、友人から「転職するには、何の資格を取ったらいいと思う?」と質問されて言葉に詰まってしまった。確かに私は資格の取得とほぼ同時に転職したが、転職するために勉強を始めたわけではなかった。中小企業診断士をめざすきっかけは私にとってごく自然な流れだったのである。
当時、私は国際線を乗務しており、仕事を楽しんでいた。客室乗務員の仕事というのは顧客と接する現場の仕事であり、顧客の生の声を常に聞く環境にある。特に国際線はフライト時間が長く、お客様と会話する機会も多い。会社からサービス内容の変更等、何らかのプレスリリースがあると直ぐに顧客の反応がわかるのである。新たに企画されたサービスに対して否定的な意見が多いと、私は、ニーズとのギャップになぜそのような意思決定がなされたのか気になるようになった。そして、「組織とは何なのだろう。」「経営とは何なのだろう。」という疑問に突き当たったのである。もし、私が顧客との接点という現場の仕事に就いていなかったら、おそらく経営について興味をもつことはなかっただろう。
「経営とは何なのか」という疑問を解決したいと思ったものの、具体的に何をしたらいいのかわからなかった。そこで出会ったのが中小企業診断士という資格だった。中小企業診断士になるには、経営に関する基本的、かつ広範囲な知識を要する。資格に惹かれたのではなく、資格取得のために勉強する内容に興味をもったのである。不規則な生活を送っており、休日は時差に苦しむことも多かった私にとって、勉強は楽ではなかった。しかし、勉強すればするほど、経営にも自分の仕事にも興味を深めていった。そんな折、私にとって衝撃的な出来事が起こったのである。国内線におけるスーパーシートサービスの廃止だ。ターゲットとする顧客のニーズとずれていると、Frequent Flyers Program(マイレージサービス)を考えると国際線への影響も無視できないと焦燥感を感じた。でも、私がいくら考えたところで会社の意思決定に何のインパクトも与えることはできない。その時、一乗務員の限界を感じ、転職を意識するようになったのである。
「転職をするために資格をとる」というのも一つの考え方だろう。ただ、何の資格をとるか、どんな転職をするか、そのヒントは自分の中にしかないと私は思う。
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