先日、いつものようにオフィス近くのスペインバールでktsメンバーと飲んでいた時、歴史上の人物に話が及んだ。弊社社長が高杉晋作の「苦と楽を差し引きすれば、浮き世の値わずか三銭」を座右の銘としていることもあり、話は幕末志士を中心に盛り上がっていた。そんな中、私は、ふとあるビジネス情報サイトで連載されていたナポレオンについてのコラムを思い出したのである。
そのコラムでは、ナポレオンのリーダーシップを現代のビジネスシーンに置き換えて分析していた。ナポレオンは軍事的・政治的才能が高く評価されるとともに、「私の辞書に不可能という文字はない」と言ったなどのエピソードで知られ、超人的なイメージを持たれることが多い。実際、決断力や意志の強さ、正当性を主張する力など人を統率する上で必要な能力を高く備えた人物である。そして、ナポレオンがどんな逆境を迎えてもそれらの能力を発揮できたのは、現状の把握や情報の分析、人心の洞察に尽力したからだという。ナポレオンが備えていた能力は、現代に生きるビジネスリーダーにも必要であり、私たちコンサルタントはまさに現状を把握し、情報を専門的視野から分析し、組織に関わる人々の心を洞察しながら助言することで、ビジネスリーダーたちが能力を発揮するのを支えている。
しかし、私にとって何より印象深かったのは、国家を率いる人間であり、多くの秘密を抱え持つナポレオンが孤独に苛まれ、自らを追い込んでしまう話だった。1814年、敵の侵攻を許した後、義弟の裏切りもあり窮地に追い込まれたナポレオンは、敵の僅かな弱点をついて逆境を覆す。ところが、偶然の戦端から再度壮絶な騎兵戦が勃発し、ナポレオンはアルシ・シュル・オーブという町に閉じ込められてしまう。その後、援護戦をしながら何とか脱出し、再度形勢逆転を狙うのだが、脱出を果たした際に妻へ書いた手紙が敵の手に渡り、とうとう退位に追い込まれることになる。ナポレオンは作戦のすべてを一人で考え、全指揮権を握って戦っていた。だが、戦況は千変万化し、大勝利の後に突然捕虜になりそうになるなど、先の見通しは依然としてつかず、誰に相談することもできない。なぜなら、最高司令官の態度は全軍の士気に関わるからだ。しかしながら、ナポレオンはその孤独感に耐えられず、信頼を寄せている妻に手紙を書くことで心を落ち着けようとしたのだった。人間であれば誰しも孤独に悩むことはあり、ナポレオンも例外ではなかったのだ。ナポレオンに唯一不可能なことがあるとすれば、孤独に耐えることだったのかもしれない
現代のビジネスシーンでも職位が上がれば上がるほど仕事上の孤独が増えるであろう。コンサルティングの現場で私たちが接するのは上位層のビジネスパーソンが多い。つまり、孤独を最も多く抱えている人たちである。コンサルタントは、外部から客観的視点を通してクライアント企業をよりよい方向へ導くのが主な仕事であるが、外部の人間であるからこそビジネスリーダーたちが孤独と戦う時に心の支えとなり得るのではないだろうか。そんな人間力あるコンサルタントでありたいと私は強く思った。 |