ブランドの内的効果について前回お話したが、ブランドの内的効果をうまく活用するインターナルブランディングが最近注目を集めている。インターナルブランディングとは、企業が従業員とコミュニケーションを図り、従業員が誇りを持てるブランドイメージを形成する活動である。その効果としてまず挙げられるのが、顧客にブランドを通して約束している価値を提供することへの従業員のコミットメントが高まることである。また、従業員のロイヤルティや当事者意識の向上、社内の一体感の醸成も挙げられる。インターナルブランディングを通してブランドの内的効果をうまく活用するには、企業が一貫したメッセージを伝えることでブランドに対する共通のイメージが従業員に取り込まれること、企業がブランドを通して顧客に伝えるメッセージと企業が従業員に伝えるメッセージが一致していることが重要となる。
ブランドが従業員の中に根付いていたとしても、そのイメージが統一されていなければ、従業員の行動はばらばらになる。また、従業員が勝手に抱くブランドイメージと企業が目指すブランドイメージに大きな乖離があれば、当然、従業員は自社がどんな価値を提供しようとしているのか認識せず、実践には結びつかない。さらに、従業員が、ブランドは顧客への約束でもあることを理解せず、“ブランドの一人歩き”によって企業ブランド=自分であるような勘違いをすれば、顧客視点にたった行動はとれないであろう。
次に、企業が従業員に一貫したメッセージを伝えていたとしても、顧客へのメッセージと従業員へのメッセージが異なっていれば、混乱を起こし顧客への約束の実践は成し得にくくなる。それだけでなく、社外へのメッセージと社内で言っていることが矛盾していれば、従業員は自社に不信感を抱くであろう。企業が顧客へのブランディング活動を熱心に行えば行うほど、従業員にメッセージを送れば送るほど、その行動が社内で嘲笑を買う恐れさえもある。
前回のブログで私が以前勤めていた日本航空を例にあげたが、同社では上記のような問題点が存在していたように思う。従業員に取り込まれているブランドは長年の歴史の中で自然に築かれたものであり、経営者側が従業員とのコミュニケーションを意識して意図的に形成したものではなかった。周知の通り、日本航空グループは現在業績不振に喘いでいる。リストラクチュアリングも大事だが、せっかく従業員のブランドへの意識が高いのだから、今こそ社内外のブランドイメージを統一させて従業員のベクトル合わせを行うことが、長期的であっても業績回復への一つの布石となるのではないだろうか。同社OBの一人として求心力ある企業への再生を期待したい。 |